コバケン・ワールド Vol.35(日本フィル 第247回芸劇シリーズ)@東京芸術劇場


久々の芸術劇場コンサートホールでのコンサート。コバケンさんこと小林研一郎氏は現在日本フィル桂冠名誉指揮者とのことなのだが、だいぶ長いこと指揮者をされているなぁと思ってプロフィールを確認したら、すでに83歳だということを知った。一度作曲家を卒業してから、新たに指揮科に入り直し、30歳超えてからブダベストの指揮者コンクールで優勝をしたという遅咲きの指揮者なのだが、作曲家としてもご活躍なのは本当にすごい。
ゲストにピアニストの仲道郁代氏を迎えて「ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番 ≪皇帝≫」を演奏後、今度はオーケストラだけで「ブラームス交響曲第1番」を堪能した。私の席は3階席の後ろの方でかなり舞台からは離れた距離にいたつもりなのだが、まろやかな音を堪能できて最高だった。

メモと勉強がてら、プログラムから曲紹介を引用しつつ、曲についての情報をメモしておこうと思う。

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番 ≪皇帝≫
ベートーベンは天才ピアニストとして知られており32曲のピアノ・ソナタを残しているとか。一方、耳が悪くなってからは、ピアノの演奏を公開で披露することはなくなり、ピアノ協奏曲も1809年に完成されたこの「皇帝」が最後だったという。1815年にピアノ協奏曲6番を書き始めたことはわかっているが、これは未完で終わっているとか。やはり耳が悪くなると、オーケストラとピアノ曲のハーモニーを書き上げるのは難しかったのかなぁ。
この曲ができた当時、ナポレオン軍がウィーンに侵攻したことで、ベートヴェンも砲撃の音に怯えながら地下室で過ごしていたという。その後、バーデンバーデンに避難して、全曲が完成したとか。特徴としては、第一楽章に出てくるカデンツァで、ピアノソロではなくピアノとオケが絡み合うカデンツァが特色なのだという。

ブラームス交響曲第1番ハ短調 op.68
ブラームスは、一世代前のバロック時代や古典派の音楽が好きで、ベートーヴェン交響曲は特に強く意識していたとか。なかなか交響曲を書こうとしなかったが、やっと1876年に2年をかけて完成させたのがこちらの交響曲らしい。この初演が非常に好評で、「ベートーヴェンの第10交響曲」という賛辞を贈られたことですっかり自信をもっったブラームスは、この後立て続けに名作を完成させた。
曲は4楽章からなるのだが、この四楽章をしばらく聴くとクライマックスで「あーこれだこれだ」と思うフレーズが出てくる。解説によると、「夜明け前を彷彿とさせる序奏、ホルンで表現される羊飼いのラッパ...」とのこと。このホルンの旋律は、ブラームスシューマンの妻であるクララの誕生日に贈ったものらしい。芸術家には道ならぬ恋がよく似合う。

アンコールは「ダニーボーイ」だったのだが、日フィルとコバケンが得意な曲とするだけあって、繊細で素晴らしかった。