▼二月堂の欄干下から、奈良の街並みを見おろす
musicircusのHさんからのご紹介で、幸運にも奈良は東大寺の修二会、いわゆる「お水取り」と呼ばれる行事に行った。752年より1度も途切れることなく行われてきた、日常犯している過ちを本堂の十一面観音の前で懺悔する、というものだ。国家や万民のために祈りをささげる儀式であるから、それに見合うべく、1カ月近く行われる大がかりな行事である。そして「お水取り」は、こうした大きな行事のなかの、ほんの一儀式を指す。3月12日は、このお水取りが行われる唯一の日だったため、多くの人が詰め掛けた。細かい様子や写真は、新聞サイトで情報を得ていただくとして。
我々が到着した時点で、もうすごい人だかりとなった、二月堂周辺の模様は、こんな感じ。
目の前の小山をのぼりつめて、私はこの行事を見るために奈良に来たという仲間とともに、欄干の下までたどり着いた。
私たちは、親切な方たちの計らいもあって、「お松明」を火の粉が舞うくらいの至近距離、欄干のすぐ下あたりで眺めてから、この行事に何度も参加した人にくっついていって、「神明帳」「過去帳」に立ち会い、「お水取り」はお堂の欄干から雅楽の調べとともに眺め、最高の場所で「だったん」を見つめた。
教会できくグレゴリオ聖歌やゴスペルを音楽と認めたことはあったが、声明やほら貝の響き、「走り」の下駄の音、「五体投地」で響く、膝を床に打ち付ける音…これらの音が、不思議と耳に心地よくて。布越しに、あるいは格子越しに、松明の火によって映し出される儀式を眺めながら、ふわふわと、儀式を眺めていた。
今、家に戻って修二会関係の資料を見ると、出発前には頭に入らなかった説明がつるっと頭に染みていく。こんな知識を従えて、また訪れたい修二会である。それまでは、CDでこの不思議に心地よい音を見つめるのだ。
- アーティスト: 小沢昭一
- 出版社/メーカー: 日本伝統文化振興財団
- 発売日: 2010/01/20
- メディア: CD
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http://mainichi.jp/tanokore/column/jojima/003413.html