「変貌するメディア――ビジネスやアートは新たな価値にどう向き合うのか?」

森美術館MAMアートコース12回目の講演は、大ヒット本「フリー≪無料からお金を生み出す新戦略≫」の監修・解説・販促を手掛けたという、小林弘人氏の表題レクチャーであった。
フリー 〜〈無料〉からお金を生みだす新戦略 (Chris Anderson著、高橋則明訳) - 空間Annex

IT技術の進歩によるネット環境の進化とライフスタイルの変化により、アーティストも含む一般人や一般企業がいかにメディア環境を利用すべきか、というようなテーマでの講演だった。いささかカタカナ語が多すぎたのがちょっとピンと来なかったのと、アートや美術館ならではのおもしろいメディア環境利用法事例など紹介してもらえると、なお良かったように思うが(ワガママ?)ビジネス寄りの話がきけて、興味深かった。

≪印象に残った言葉と感想≫
◆おなじメディアでも、ネットというのは空気のような存在だ。(うーん確かに。知らない間にすごく浸透しているものね。)

◆「潤沢に生産されているもの(情報含む)をうまく活用すること。潤沢なものを無料でばらまき、新たな希少を売り込む。何を希少ととらえ、現金化するかが、ポイントとなってくる。(フリーにもありました。フリーミアムは、無料ユーザを90-95%にして母数を増やし、残った有料ユーザからの利益でまわしていくビジネスモデル)

◆「だれでもメディア」時代。情報配信にお金はかからないし、CGMで個人も企業もどんどん発信ができる。これにより、プロのメディアは、既存のブランド力を活かした「拡張型メディア」を目指すことで、情報を武器に役割を拡大していく傾向にある。

◆マスフィードからマイクロフィードへ。
自分でメディアを持ち、コミュニティを作って発信した結果、マスメディアサイドから情報を求めてコンタクトしてくる時代になった

◆未来は現在の延長線上にある時代ではない。だれでもメディアは、将来はドコデモメディア(外出先からリモートで家電操作など)やなんでもメディア(デバイスがなくても、その場にあるキーボードがパソコンとなるという予測ができる。

◆URLがないものにもURLタグ化して現在が可視化できるようになったり、感覚の可視化ができるようになるのは、近い将来かもしれない。
(香りつきデジタルサイネージなんて、すでに展示会で発表されていたものね)

◆アーティストが知名度をあげるには、才能よりもアウトプットが大事。だれもが発信者になれる時代だからこそ、アーティストは才能も国境も超えて流動化すべき

◆代替不可能なユニークワン(唯一無二の存在)となれ

聴講者は全体的に若い世代が多かった気がする。
それにしても、アーティストに対する助成金もないなか、日本の芸術家はよくがんばっていると常日頃から思っている。ぜひこうしたメディアをうまく使って情報を発信し、どんどん作品を広めていってほしいものだ。

そうそう、現在はやっているビジネスモデルとして、
1)マイクロファイナンスに代表されるような、貧困層を相手にしたビジネス形態「BOP」( 2)情報のやり取りにより、余ったモノを無駄なく使う「コラボ消費」 3)オンラインで集めた人をリアル店舗に送りこむ「O2O(Online to Offline)」が挙げられていたが、ここで事例として挙げられていたサイトで興味深いものがあった。ZopaにKIVA、Airbnb、opentableなど。あとで調べてみよう。

1911年、資本主義世界の構図。これを世界規模で捉えると、人口の多い最下層をターゲットにする動きは自然だな、と思う。