銕仙会特別講演(日本全国能楽キャラバン)@国立能楽堂

この日の番組は、復曲能「重衡」 (シテ:観世銕之丞)、狂言「鬼瓦」 (シテ:山本東次郎)、そして 能「三輪 白式神神楽」(シテ:鵜澤久)。残念ながら解説講座には間に合わなかったので、プログラムをみながらの鑑賞となった。

「重衡(しげひら)」は、ジャンルとしては平家物語の登場人物の霊が登場して死後の苦しみを見せる修羅能とか修羅物に分類されるものらしい。世阿弥の名作が多いジャンルで、こちらも作者未詳といわれながらも世阿弥時代に成立していたことだけはわかっているらしい。謡本が残るだけだった本作品に光が当たったのは1963年のこと、そして、1983年に「橋の会」という能楽プロデュース団体が復曲初演されてから幅広く広まったらしい。シテを務めた観世銕之丞も、橋の会の上映に携わったという。重衡の立場は、なんとなくアイヒマンっぽい感じだろうか。父親である清盛の命令で、強く影響を意識しないまま南都焼き討ちをしてしまい、最後は処刑されてしまう。切ない話だと思った。松明や扇を持ち替えながら舞う様子が席からよく見えたのと、老人の面が印象的だった。

狂言「鬼瓦」 ではほんわかとした笑いを。因幡堂をじっくりみていた大名が、鬼瓦をみながら素っ頓狂な声を出して鬼瓦と似ている人を指摘するのがいい感じ。


「三輪 白式神神楽」は、先ほどのジャンル分けでいうと雑物とか雑能と呼ばれるもので、主役は女神。解説によると、三輪明神の神秘(神と人間が契りを結ぶ三輪神婚説話や、三輪明神と伊勢明神が本来一体であり、かつ男神でも女神でもあることを前提に天岩戸神話を演じる点)ということなのだが、ちょっと難しいな...「白式」ということで、扮装も白に統一されているとのことだった。確かに後半、真っ白な衣装だったな。あと、白式神神楽というのが、神話世界の清浄さや荘厳さが強調される演出のことをいうらしい。舞台に作り物(前の方に御神木の杉の木があしらわれている)があって、その中にお籠りになった後、天岩戸隠れのさまを再現する舞を踊る。

理解していないなりによかったことが二つ。一つは、プログラムに謡本の詞章が書かれていたところ。これを目で追いながら舞台をみていると、少しだけ内容がわかったような気分に浸ることができた。二つ目は、今回の能の番組が、二つともワキに僧がいて、かつ、途中でアイに狂言方が出てきてワキに情報のインプットをする、という構成だったこと。一緒に行った人は、能管の吹き方の違いや好みなんかを語っていたところからすると、私の鑑賞レベルの低さは否めないが...少しずつ楽しめるようになりたいと願っている。