Jon & Jimmy-Dreams Drugs & Django

Jon & Jimmy: Dreams Drugs & Django [DVD] [Import]

Jon & Jimmy: Dreams Drugs & Django [DVD] [Import]


愛すべき天才ジプシーギタリスト、Jimmy Rosenbergの、決してオフィシャルに語られることない"逸話"と、Jimmyのプロデューサーで共演者でもあり、まるで兄弟のように親交を重ねてきたノルウェーのギタリストJon Larsenの屈折した関係を描いたドキュメンタリーDVDをみた。私はJimmy Rosenbergの大大大ファン。"Jimmy Rosenberg is Back."というDVDが本国オランダで発売されているにもかかわらず、それが出た2007年以降活動の兆しがないJimmyが出演しているとあれば、観るしかない。

二人の共通点は、Diango Reinhardtの演奏に衝撃を受けてギターを始めたということだ。Jimmyは、9歳にしてジャンゴの伝説を描いたBBCのドキュメンタリーに出演、12歳でCDをリリースしたり、ジャンゴとも共演歴があるバイオリニストStephane Grappelliをはじめとした数々の有名ミュージシャンと共演するなど、若くして成功を収めた。1993年、13歳のときJonと会って、Jon Larsenが主催するレーベルHot Club RecordsよりCDをリリース。その後同レーベルから数々のCDを出したのは、知られているとおりだ。

そのJimmyは、(オフィシャルにはどこにも書かれていないけれども)いつしか麻薬に侵され、(実際に3年ほどJailにいたらしいが…)Jonとは音信不通に。
ところが、2004年にオスローで行われたDjango FestivalでJonの前に現れたJimmyはすごいギターテクをみせたため、Jonはオスローを起点に3カ月のツアーをセットした。しかし、麻薬を完全に絶っていなかったJimmyは発作を起こして倒れ、暴れるなどしたため、入国24時間後にはオランダに強制送還。Jimmyはコンサートツアーに大変な未練を残し、Jonがギターを盗んだとか、拘置所でJonとその家族の元に殺し屋を送ったなどと吹聴し、Jonはそれに怯えて暮らしたとか。

そんな思いをしてもなお、Jimmyの才能を買っているJonは、キャラバン暮らしのJonに連絡をとり、彼の住むオランダまで探しにいって…というのがこのドキュメンタリーの大筋だ。

それにしても、日本語字幕もないままよく売り出したな、日本のディストリビューターさん…。ちゃんと売れるか心配だけれども、サウンドトラックも売っているから、いいのかな。映画部分は英語で構成されているが、インタビューパートに至っちゃ、たとえば、Andreas Obergはノルウェー語、Angelo Debarreやらフランス人ミュージシャンはみんなフランス語でしゃべり倒しており、(まあフランス語しゃべるノルウェー人Jon Larsenが作っているんだから、当然か?)、英語字幕は出せるにしても、日本人にとっちゃ不親切だよな…NTSC形式で売っていただけただけでも感謝しなきゃいけないけれども。一方で、インタビューだけではなく、いろんな人の演奏シーンもみえるのは、嬉しい。何よりも、出演者のギタープレイをドアップで観られるのは、ギタリストも楽しめる仕様かも。

トレイラーでは、ちょっぴりJonの演技がかった映像が気にならなかったわけでもないが、Jimmyの演奏のすごさでそれは帳消しだ。ただ、眼光が鋭くなり、かつてのさわやかな表情が少ないJimmyが垣間見せる、ミュージシャンとしての自信と、人前で演奏することに対する執着心、仲間の演奏に立ち会った時の嬉しそうな表情には感動すら覚える。クスリから抜けられなくなり厚生施設とキャラバンを行ったりきたりするような生活になってもなお、この人はミュージシャンなんだ、本当にこの音楽が好きなんだなぁ。