ホノ・ウィンテルスティン(ウィンターシュタイン、とかのほうがより近い発音のだろうか…、まあよい)Hono Winterstein といえば、あの大物ジプシー・ジャズ・ギタリスト、ビレリ・ラグレーン Biréli Lagrène の「Gypsy Project」を支える屋台骨として、また、ドラド・シュミットDorado Schmittやストーケロ・ローゼンバーグ Stochelo Rosenbergの傍らで安定したリズムギターを聴かせてくれていた大物ギタリストだ。
このリズムギター職人が、昨年11月に"Horizons"というアルバムをリリースした。ジャケットに顔がどーんと出ているので、このアルバムではホノが主旋律を担当するのかと思いきや、ソロ担当は相変わらず息子のブラディ Brady Winterstein。すでに、ブラディとはデュオで活動していたので、この組み合わせには不思議はない。他には、やはりビレリのGypsy Projectで一緒だったベーシスト、ディエゴ・アンベール Diego Imbert やサラ・ラザルス Sara Lazarusなども参加している。
ここまでは納得の参加ミュージシャンだが、よくわからないメンバーがいた。一人は、フランスのピアニスト、ジャン-イブ ユング Jean-Yves Jung。マヌーシュ・ジャズアルバムにピアノが参加するのは珍しいのではないかと思って調べたら、この方も百戦錬磨のミュージシャンで、ビレリの2012年のアルバム"Mouvements"にて楽曲提供をしたり、ハモンドB-3で参加もしていた。Marcel Loefflerのアルバム" Images"にも、楽曲提供+ピアノで参加している…ということは、マヌーシュ・ジャズコミュニティに近いピアニストらしい。
もう一人は、参加ボーカリストとして4曲に参加しているクラウディオ・ファヴァリ Claudio Favariという人。この人物、実はギタリストでもあり、70年代にドラド・シュミットが結成したバンド、Dorado Trioに一瞬だけ参加していたらしい。このバンドには、ホノもリズムギターで参加していたので、この時代にすでにつながりができていたに違いない。つまり、このアルバムは、マヌーシュ・ジャズとホノに関係が深い人たちが作り上げた作品なのだろう。収録曲には、ホノのオリジナル曲"Lolita"、"Lune de miel 2020"が収録されているのも、特長だ。
現在、絶賛プロモーション活動中…ということで、TSF JazzのPodcastに登場した時のライブ動画が公開されている。
とくに、"Pique-nique"という曲がいいなぁと思って調べてみたら、Claudio Favari自身の曲だった。スキャットがいい雰囲気で流れていって軽やかで最高だ。
アルバム全体の雰囲気を知りたい場合は、こちらのティザー動画がよい。ギター主体のディープなマヌーシュ・ジャズと、ちょっとジャズ色が濃い楽曲がほどよいバランスで収録された素敵なアルバムになっている、ということがよくわかる。