電力技術 〜市場自由化に向けた挑戦〜


電力技術―市場自由化に向けた挑戦

電力技術―市場自由化に向けた挑戦


本がマニアックすぎて、もはやアマゾンに画像なし(笑)。2001年に出版された、OECD加盟国(=電力需要が成熟しており、もはや既存技術や既存施設をいかに改良して使っていくか、ということが重要な国々)の発送電事情を分析しながら、電力技術を具体的にとらえてみようという本。
印象に残った記述としては、まず、電気事業者の技術選択は、政府の要求、地元燃料、国内メーカー、環境上の性能、雇用確保を望む圧力などに強く影響される、ということ。発電施設は稼働率が重要だが、実際は定期的な保守点検にとらわれる傾向にあり、運用頻度による機器の老朽化をベースに点検を考える必要もある、ということ。また、設備容量増加の技術も重要だということ。原子力発電は、化石燃料が高いところでは潜在的に有利だし、化石燃料価格高騰に左右されず、気体が排出されないことからメリットはあるものの、廃棄物処理と解体費用が不確かなのと、政治的に好意的でない国が多いということ。天然ガスによる発電は燃料の価格が上昇した際には、燃料費が発電コストの60-75%を占めることになり、料金上昇の影響は免れない。
この本で予見されているとおり、原子力発電は今、社会的受容性困難の問題に直面している。一方、だからといって天然ガス発電に依存というものでもないらしいところが、電力技術の難しいところである。いずれ、それぞれの国にはそれぞれの事情がある。たとえば、ある資源が豊富な国もあれば、そうでもない国もある。地理的条件もあろう。他の国は参考にはなれど、国の条件をかんがみれば真似すればいいというものではない。国が今後どのようにエネルギー政策のかじ取りをしていくのか、注目したいと思う。