ゼロの焦点(松本清張)

ゼロの焦点 (新潮文庫)

ゼロの焦点 (新潮文庫)

映画化2回、ドラマ化は6回もされた作品の原作。実家にあった古い文庫版を読んで、みるみるうちに引き込まれていった。
主人公の禎子は、広告代理店に勤務する鵜原憲一と見合い結婚した。憲一は、今までは金沢で20日、東京で10日を過ごす暮らしをしていた。禎子との新婚旅行が終わってから、憲一は金沢へ旅立ち、そのまま姿を消した。
禎子は金沢へ向かうが、夫の行方を調べるうちに、思いがけない夫の過去に突き当たるのであった…。

禎子は憲一の会社の同僚である本多の力を借りながらも、金沢で積極的に人に会い、良い推理をしていく。推理小説としてすごく緻密とはいいがたいかもしれないけれども、冒頭部分から伏線がうまくはられていて、どんどん物語に引き込まれていった。憲一がかつて巡査として働いた東京のある場所は、太平洋戦争がもたらした影響で、今とは異なる様子をみせており、そこでの暮らしを経て今を生きる女たちは、その過去を隠したいと願っている。そんな思い故に起きた悲劇を描いたサスペンス、ともいえよう。

以下は、初めてこの小説が映画化された際の予告編。なんと松本清張ご本人まで登場している。当時の情景もこんな感じだったのだろうか。