- 作者: 徳岡孝夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/08/04
- メディア: 文庫
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妻想いの文章を書いている人といえば、奥様の死後1年後に自殺をした江藤淳氏や、城山三郎氏が思い浮かぶのだが、今日読み終わったのは、以外なところで徳岡孝夫氏のエッセイだ。
この方、本年6月号を以て終了した「諸君!」のコラム「紳士と淑女」を30年も匿名で執筆していたことを公表した。が、シニカルだったこのコラムとはまるで違う筆致に驚かされた。
人に指摘されてはじめて「自分で自分の心に気付いて」妻を見初めたという徳岡氏は、次の世でもまたもや妻を見初めるであろうと確信をもって綴る。ひとつひとつのエッセイに、妻を讃える文章が盛り込まれるとともに、生前やってやれなかったことを省みる。そして、妻を亡くしてもなお、妻を想い続け、時に涙ぐむ。
世を風刺する文章を書くジャーナリストを以て、こんなに素直な愛情表現を浴びることができる妻の和子氏はさぞ幸せだっただろう。きっと、妻として尽くして添い遂げてはじめて、ここまでの栄誉にあずかれるんだろうなぁ。羨ましいことです。