シンガポールのシンガソングライター、ディック・リーDick Leeが昔から大好きで、今も懐かしく思い出したりするぐらいなのだが…。
シンガポールの巨匠ディック・リーDick Leeを懐かしむ - 空間Annex
先日、飛行機にのったら、偶然にもディック・リーの自伝映画を見つけてしまった。「WONDER BOY」。シンガポールを代表するシンガソングライターで、私にとってははじめてシンガポールという国を認識させてくれた人物でもある。そんな人の自伝映画だったら観ない選択肢はない!
2017年、シンガポール、ダニエル・ヤム&ディック・リー監督
時は60年代後半のシンガポール。エルトン・ジョンにひそかに憧れ、髪の毛をマッシュルームカットのようにしてメガネをかけ学校に通おうとする若きのディック青年だが、当時のシンガポールはロック禁止、長髪禁止のムードにあふれていた。そんななか、元々音楽が大好きだったディックは、音楽に目覚めて、友人とバンド「WONDER BOY」を結成する。ただし、そのバンドは洋楽のコピーバンド。作曲が得意だったディックは、物足りなさを感じ、独り立ちするのであった…。
ディックの実家は大変裕福だが(ピアノだって裕福だからこそ弾けるのだと思われる)、音楽に対する理解は全くないので、当然家族ともうまくいかない。ま、そんなのは、ラ・ラ・ランドLa La Landの主人公、セブも同じか。音楽家を目指すということはそういうことなのかもしれない。ディック自身も、才能を素直にほめてくれる人もおらず、夜遊びをしまくったりして、なんだか生きにくそうな時代を過ごしたんだなと思う。家族の一員を失うところあたりは「うまくできすぎ!」と思ってしまったが、これも実話だというから驚く。
映画は、多少年代のずれはあるものの、ほぼ実話に基づいているという。もし、この中で使われているディックの楽曲も、過去の作品なのだとしたら…みんな、彼の才能に早く気が付けよ!と思ってしまった。彼の才能を見つけて、デビューアルバムのプロデュースに協力した人たちは本当にすごいなぁ。映画の中の曲はかなりメロディラインが美しくて、私はさっそくサントラも入手した。"Fried Rice Paradise"は見事だが、彼がシンガポール文化を全面的に押し出す前の曲"All My Nightmares"とか、"Maybe Friend"とか、どれもいい。その旋律と優しい声をきくだけで、なんだか泣けてしまうのだ。
日本でも上映されていたということを知った。お客さんはどんな反応をしたのだろうか。
ディック・リー――皮肉と運命とフォークソング:音楽を通じて生み出されるアイデンティティと帰属意識 | 特集記事 | 国際交流基金アジアセンター